講師より挨拶

こちらのページは、定例の稽古会で講師を務める林 久仁則からのご挨拶となります。

担当講師:林 久仁則

【ご挨拶】:2014年10月より発足したいにしえの会で、定例の講師を務めさせて頂いております。私自身、武道との接点は自身の専門とする運動生理学・スポーツのトレーニングの延長で興味を持ったことから始まり、甲野善紀先生の技を直接受けさせて頂いたことから、身体の世界の本格的な探求が始まりました。そして知れば知るほど、”からだ(姿勢)”と”動き”のつながり、また”イメージ(想起)や呼吸”が動きに及ぼす影響について、自身が無知であることを痛感しています。私自身が学ばせて頂いている身でありながら、僭越にも講師を務めさせて頂いております。

いにしえの会は、発足から7年が経つ任意団体です。稽古名簿を振り返りますと、延べ人数約1900名の方に参加頂き、150回の稽古回数を重ねています(2021年12月現在)。ここに至るまで、様々な参加者や特別講師、友人、運営側の協力、東京都からのプロボノ派遣と、お一人お一人により会が育まれてきました。この点、全ての方に心より感謝をしております。
「誰でも気軽に学べ、参加が容易で、いつでも戻ってこれるような場」を地域の中に場として開き続けること、継続することに価値があると思います。

心身のことを探求する難しさもあります。しかし、からだの働きと仕組みの理解が一致した時、また他者と学び合い、教え合うことで自ずから湧きあがる喜びの感情は、人が自然と持ち合わせているものではないでしょうか。「いにしえの会」というネーミングは会の設立に奔走された大石初代会長の感性で平仮名が充てられました。いにしえより残されてきた伝統や継承文化の中には、先人によって残された型、技術に潜む巧みな身体性があります。身体運用や身体様式を見い出すということは、武術や武道の根幹にある人間の体や動きの理解を高め、型や技に残った先達のメッセージを読み解くような一面があると考えます。そして、それをどう現代社会の中で位置付けていくのかについて、学ぶ姿勢が問われてもいると自覚しています。矛盾するようですが、その感性を高めることと、身体感覚を磨くことの方向性は、似ているものを感じます。
そうした探求の場の一つとして、「いにしえの会」が地域に根ざして活動を継続すること、多様な参加者と共に、学びに繋がる仕組みを作り出すことを、会として目指しております。

上野は東京藝大の近く、東叡山 寛永寺(かんえいじ)という創建400年近い仏門寺の境内の、人目つきずらい場所に石碑があります。 石碑には、沢庵宗彭 筆の「放下着」の3文字が刻まれています。
武術や武道で習う身体性とは、自身の執着から離れて、まさにその時の今、その時の状態における最善をどう尽くすか。その表現そのものであります。

ご縁あり、当ページをご覧になってくださった方、ぜひ一度稽古会に足を運ばれてみてください。(2022年1月9日 追記、修正)

【古武術に関連した略歴】
東京藝術大学 体育I・体育II 非常勤講師 (2013年より継続中:artにおける身体教育)
東京藝術大学 公開講座 「古武術に学ぶ種々の身体操作法」 担当講師 (2014年より毎年開講中)
つくば身体操法研究会 世話人 (2005年7月高橋佳三先生より引継ぎ) 世話人として稽古継続
文京区アカデミー 区民による推薦型の講座 (大石初代会長より推薦)担当講師 (2017年)
文京区アカデミア講座 後期II 講師 「~日常生活に活かす~古武術的トレーニング」(2020年)